「さーてと じゃ隆彦さん、始めましょうか。」
やる気満々の信一を見て隆彦はほくそ笑んだ。
「プロセスマネジメント大学で聞いた話をお店に持ち帰っても、まず最初はみんな半信半疑です。でもね、まあ一人ぐらいは興味を持ってくれる人がいるから、その人をまず味方につけてしまえばいいんですよ。
それで一回小さな成果を出す。それがうまく行ってしまえば後は燎原の火のごとし、みんな協力してくれるようになりますよ。」
先週プロセスマネジメント大学受講後に、有志で開かれた懇親会の席上でコース受講3回目のベテラン、機械部品卸業の2代目経営者本多氏に教えてもらった事が、そのまま目の前でおこったからである。
「自分一人でワークシートを完成させておかなくてよかった。」
と思う隆彦だった。
「信さん、まず最初に決めるべきゴールは、盆明けから9月中旬までの残り5週間、法人団体向け納涼プランで100万円でいいですね。」
「そうだなぁ出来るかどうか分からないけど、隆彦さんの言う通りやってみましょう。ところでうちの宴会客の客単価っていくら位なんでしょうね?」
と信一が尋ねる。
「お? 客単価から入るなんて、真さん目の付け所がいいですね。
実はここ2週間の伝票から計算してみた数字はあるんですよ。
4組38名来て頂いて30万8560円だから単価は8120円、ざっと8000円ですね。」
「じゃ100万を8000で割って125人に来てもらえばいいってこと?」
「さすが信さん、数字に強いですね。
ただ、もっとお客さんが来やすいように単価をもっと低く設定しませんか?飲み物込みで6,000円くらいで何とかなりませんかねぇ?」
信一が考え込む
「うーん、ぎりぎりかな、あんまり安いとウチの品質が出せなくなっちゃいますよ。それはそれで店の信用に響くでしょう?
でも確かに6,000円で寿司屋の宴会が出来たら、みんな来るでしょうね。」
信一が顔を上げた
「隆彦さん、食べ物は寿司屋らしい、刺身、握りに巻物、それにプラス旬の魚介鍋でボリューム出して5,000円、飲み物は1,200円でビール1本と日本酒2合またはウーロン茶、後は、お店から焼酎ボトルサービス。
はみ出た分は別途ってことでどうでしょう。」
ここぞと隆彦は身を乗り出した。
「信一さん、いい線出ましたね。じゃあ平均単価6,250円の8人一組を基本に5週間で20組。これで売り上げ100万円でどう?
「隆彦さん、分かりましたじゃそれで早速行きましょう。
1週間で4組ね。仕入れも考えなくちゃ。
さあ忙しくなるぞぉ!」
と信一が意気込むと、隆彦がそれを制した。
「信さん。目標組数が決まっただけでは何にもならないんです。
ここから、具体的行動に落とし込んでいきますよ。」
「ぐたいてき 行動 ねえ・・・
そういえば、目標組数が決まっただけでは仕入れくらいしか出来る事がないですねえ。
いったいどうすれば・・・」
「それをこれから一緒に考えるんですよ 信さん」
困り顔の信一を見て、どことなく嬉しげな隆彦だった。