第2章 第5話「信一 プロセス設計にハマる(3)」


「ぐたいてき 行動 ねえ・・・

そういえば、目標組数が決まっただけでは仕入れくらいしか出来る事がないですねえ。

いったいどうすれば・・・」


「それをこれから一緒に考えるんですよ 信さん」


困り顔の信一を見て、隆彦は続けた。


「目標は5週間で20組の売上、それを達成するための具体的行動を順番に決めて行くと、最終的に今からやらないといけないことが決まるでしょ。」


「あ〜 逆から計算して行くわけだ。完成品イメージがあって、そこから逆算して設計してく・・・」

と信一は合点の言った表情になった。


「そうです。私が聞いてきたのはそれなんですよ。『ゴールから逆算』して『結果を最大化』していくんですよ」


「なるほど。じゃあ20組の予約をしてもらうためにはどんな逆算をすればいいのかというと…」

信一は独り言のようにそういうと考え込んだ。


「そうか!まずこのキャンペーンをお知らせしなきゃないんだから、最終的にそのハガキなりチラシなりの枚数が決まればいいんですね。」


「さすが! それがゴールから逆算したゴール、つまりスタートになるんですよ。」

と、隆彦が持ち上げる。

「じゃ、さっそくゴール側から一つ戻ってみましょう。ゴールの一つ前って、信さん、どこだと思います?」


「うーん そりゃあ 電話とかで予約を入れて頂くことかなぁ。」


「ですよね。でも20組の予約電話を頂けば、20組売り上がりますかね?」

と畳み込むように隆彦。


「たまにだけどキャンセルもあるし、少し余裕が必要だよなぁ・・、1割くらい見といた方が・・・」

腕組みをしながら、信一が宙を見上げる。


「そうですよね、お客様の都合によるキャンセルや、指定された日時が埋まってしまってるなんてこともありますよね。」


隆彦は続けた。

「工場なんかで、製品を作るときに作った数に対して、検査に合格して出荷できた数の割合を『歩留り率』って言いますけど、ここでもそういう考えが必要ですね。やってみないとわからないのですけど、経験なんかから想定することは出来ますよね。だからここでは『次のステップへの想定転換率』って呼びましょう。」


それを聞いて信一の表情が明るくなった。

「歩留りかー、そういや学校で聞いたような気もするね。じゃここの想定転換率は90%と見て、必要な予約は22件っと。」


「こんどはその予約電話を頂くためにしなくてはならない具体的行動なんですけど…

信一に問いかけるように、隆彦はこう続けた。


「ただチラシ送っただけで来てもらえるもんでしょうか?」


「えっ? チラシ送っただけじゃダメなの?」


さっきまで明るかった信一の顔色が一気に暗くなった。


第6話「寿司屋の営業」につづく


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