前章のあらすじ
東京新橋二丁目のごくありふれた寿司店「すし処さわ田」、跡取り息子の隆彦が、ひょんなことから「プロセスマネジメント」に出会い、早速アルバイト女性の作業の標準化に成功します。
親方、おかみさんが気を揉むなか、これからどうなって行くんでしょう…
夏真っ盛りの8月◯日朝、東京品川駅近くの、とある貸し会議室内に20名ほどの受講生に混じって、やや緊張の面持ちで講義に臨む隆彦の姿があった。
「さあ、始めましょう!」小松講師の短い挨拶で、プロセスマネジメント大学港校の第2講が幕を開いた。
「前回講義でもやったと思いますが、強い営業部門の条件を3つ上げるとしたら何でしょう?」
「PDCAサイクルはご存知ですね、PLAN(計画),DO(実行),CHECK(検証),ACTION(改善)。でもね、これだけじゃあダメなんですよ。」
「皆さんも、売上や利益率の管理はされてると思いますが、結果をいくら管理しても良い結果は生まれません。御社の営業パーソンが正しいプロセスを踏んでいるかを定量的に測定しなければならないんですよ。」
実戦的なワークシートでの作業を挟んで、次々と刺激的なフレーズが小松から飛び出す。
数人のグループで行うワークでは、受講者同士のコミュニケーションもはかられ、昼食の時間は、お互いの業種が持つ問題点などについて話し合う事ができた。
そんなこんなで、盛り沢山な一日の講義はあっという間に終わってしまった。
何と言っても隆彦が一番心に残ったのは「プロセスマネジメント大学を受講しても、成果が出ない一番の理由は、分解されたプロセスを意識しているだけの場合。計測と実践を行わなくては成果が出ない。」という小松の厳しい一言だった。
帰り際、小松から「どうでした?」と笑顔で聞かれた時、講義のお礼を言おうと思っていたのに、口をついて出たのは「ええ、まあ…これなかなか大変ですね」だった。
初めて学んだ事、これまでやった事のない事を、これからやらなくてはならない、のだ、という隆彦の強い覚悟の裏返しでもあった。