第2章 第7話 寿司屋の営業(2)


「もーぉっ! わかりましたよ、こうなりゃ乗りかけた舟だ!考えましょう!」


こうやって、二人が考えたスタートからゴール(売上)の手順にのせた数字は次の通りだった。


1、名刺を新しいものからリストアップする(100件)。

2、そこから実際に訪問できる有望先をリストアップし、所在地を地図にプロットする(60件)。

3、訪問して、親睦担当者(キーマン)を探索する(60件)。

4、親睦担当者(キーマン)にあいさつ(接触)し、プランを提示する(50件)。

5、プランの魅力を知ってもらい、グループ内で検討してもらう(35件)。

6、電話予約をもらう(22件)

7、離脱防止のため、3日前に確認の電話を入れる。

8、来店頂き、売り上げる(20件で100万円=ゴール)


「さーて、やりますか真さん!」

まず二人は、帳場の小さな紙箱に入った名刺を探し当てた。

幸い名刺はここ3年分のものが捨てずにとってあり、新しい順から100件の名刺をとり、店からの距離、お客様の記憶から、有望そうな先60件に絞り込むこともさほど難しいことではなかった。


「これやってみると意外と楽しいですね。隆彦さん。」

「でしょ?」

「だんだんこの名刺がご来店されるお客様に見えてきましたよ。それにしても、なんでこんな簡単なことに気がつかなかったんだろう。お客さんとこ行きゃあよかったんですね。毎日店ん中でやきもきしながらお客を待ってたんですからね、これまでは。」

「真さん。浮かれるのはまだ早いよ。俺たちはまだそのお客さんに接触さえしてないんだから。」

ルートセールスだけでなく、飛び込みの経験もある隆彦は気を緩めない。

「この60件から、20件の団体を呼び込むということは、3件に2件からは断られるか会ってすらもらえないということですからね。」

とたんに真一の顔が曇る。

「断られなきゃいけないわけですよね。うーん馬券のはずれなら紙吹雪にして終わりだけど、こちとらは商売だケツまくって帰って来るわけには行けませんよね。」

「そりゃあそうですよ(笑)。断られても『またよろしく〜』って愛想よく帰ってきてくださいよ。」

「わかってますって!そんなことしやしませんよ」

「3回に1回は、うまく行く。この仮説を信じてやりましょうよ。」

「そうですね、目指せ3割バッターってワケか」


数日後


「こんちはぁ! 『すし処さわ田』ともうします。営業部の高田リーダーさんいらっしゃいますか?」


「あ 伊藤課長さんは転勤ですか。いま部内の宴会関係を計画してらっしゃるのって、どなたなんでしょう?」


「はい、そういうわけでこの内容で6000円の予算でやらせてもらってます。本当の夏バテはこれから。上期の打ち上げ、下期に向けてのキックオフに最適じゃないかと」


「営業に来る寿司屋」「残暑納涼会」この2つの斬新さがうけ、隆彦と真一は10日間で訪問60件中54件のプラン提示、38件のプラン検討を獲得したのだった。


第8話(最終話) 「9月某日 夜11時」に続く 




© プロセスマネジメント大学仙台校  2013