第3章 第6話 「ランチ革命」


ランチ革命を起こすべく、活動を開始した隆彦と信一。


第一関門とも言える親方へのプレゼンは驚くほどあっけないものだった。


隆彦と信一は親方から一部手直しを受けた、「いろいろ食べよう 女性限定にぎり寿司ハーフセット」のほかにも、プロセスマネジメント大学の「特性・価値検討法」ワークシートを使って考え出した、大盛りを「1.2」「1.5」「2.0」に細分化し、さらに「並」と「上」を廃止する案を親方に提案し、すんなり認められた。


さらに売れる仕組み4ステップ「集客」(女性に対するフラッキング)の一環として、恐る恐る出した「あずき色に白抜」への、のれんの色変更と同色の日よけ設置案まで「10万以内におさめろよ」、という条件付きで認めてもらえたのである。


当然これにはアイディアが良かっただけではなく、隆彦のハッスルの背後に女性の影を見た親方の応援の気持ちがあったことは言うまでもない。


・・・2週間後


「ランチ革命」3日目の水曜日の昼、「すし処さわ田」は満席だった。


目玉商品ハーフセットの甘味デザートを前に談笑に花が咲く女性客2人組。

1.2、1.5、ハーフセットをそれぞれ楽しむ上司とその部下とおぼしき男女4人組、カウンターで1.5を並んで平らげるビジネスマン3人組。


「いやー 女のお客さんが増えたら、まるで別の店みたいですね」と笑顔で精を出す信一を横目に、隆彦は別の感触を持っていた。


それは思った以上に男性客が多いということに関してであった。

細分化された大盛りメニューのおかげだけではなく、どうやら、あずき色の日よけなど女性客OKに見えるファサード(店舗正面)に惹かれて男女連れが来ているためのようだ。


また大盛り2.0メニューには、隆彦が予想していないニーズがあった。

女性客や、カップルが2名で一つを頼むというパターンが発生したのだ。

観察していると、苦手なネタを交換したりして楽しんでるようだ。

客単価は100円下がるがそこはあえて目をつぶり、吸い物も2つ出すことにした。


親方和彦発案の地元スイーツも好評だった。

さわ田のお茶は「出物」と呼ばれるいわゆる粉茶だが、抹茶入りなので甘味にもなかなか合うのである。


親方の開店の志「初めてでも怖くない一流の店」に知らず知らずのうちに一歩づつ近づいている「すし処さわ田」


2回転もいかなかったランチタイムの客回転数が2.5〜2.7に増え、3店の提供から始まった地元スイーツのデザートも、噂を聞きつけた地元和菓子店4件から新たな提供申し出を受けることになるのは、約3ヶ月後のことであった。


第3章完 第4章につづく

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